NAPPING DONUTS

NAPPING DONUTS

ショップ | 屋台  

愛知県刈谷市
ショップ
延床面積:0m2(室内空間なし)
グラフィックデザイン:川崎綾
施工  :豊中建設
愛知県刈谷市にあるドーナツ販売所の計画である。

対象敷地は、同オーナーの運営するコーヒーロースターの敷地内で、店名も異なる新業態となる店舗であるため、既存のコーヒーロースターと調和を取りながらも差別化が求められた。既存の建物は、築50年ほどの建物を同設計者が改修しており、店内外のいたるところに昔の名残を残してデザインしている。そのため、本プロジェクトで真新しい新建材を使用することは、既存建物との調和を考えたときに似つかわしくないのではと考え、もともとそこにあったかのように見えるように経年変化のスピードが速い材料で仕上げることとした。具体的には、建築の屋根部分に銅板を無塗装で用いている。この屋根部分はボリュームをもたせており、軒裏までぐるりと銅板で囲うことで、雨風の当たる箇所と当たらない箇所を設け、一律ではない複雑な経年変化を起こす。当初はピカピカと艶のあった銅板は、間もない時間の経過でも雨の当たる部分では艶がなくなり、築年数を帯びたように鈍く光る。一方で雨の当たらない軒裏は、当初の艶感を保ち、お客さんを迎え入れるアイキャッチとなっている。この銅板でできた大きな屋根の塊は、道路から奥まった位置にある既存のコーヒーロースターに反射した太陽光を届ける役割も担い、この建築ができたことで既存の店舗の環境も向上するように計画している。

また、既存の建物は既存不適格建築物であり、増築が困難なことからも本計画を移動可能な「屋台」という形式を用いている。そのために室内になる部分は設けず、断熱性能のあるカーテンで囲ったり、建築下部には車輪を設置したり、照明などの電源を一般コンセントから給電できる計画としている。また、ドーナツ販売にだけ特化したような屋台の計画でなく、ユニバーサルなデザインとすることで、週4日ある休日に他店舗への貸し出しも行う。

「NAPPING DONUTS」は、屋台と建築の間のようなスケールを持ち、既存の建物にも影響を与える新しい店舗のあり方を考えた計画である。